国内最大規模、全国13地域で同時に飛行するドローンの運航管理に成功
-レベル4を見据え、目視外の有人地帯で安全に飛び交う社会の実現へ-
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(神奈川県川崎市、理事長:石塚博昭、以下「NEDO」)と、KDDI株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:髙橋誠、以下「KDDI」)とパーソルプロセス&テクノロジー株式会社(東京都江東区、代表取締役社長:横道 浩一、以下「パーソルP&T」)は、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト/地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業※1」(以下、本事業)において、国内最大規模の全国13地域で計52機のドローンを同時に飛行させ運航管理を行う実証実験(以下、本実証)を2021年10月27日に実施し、成功しました。
本実証では、2022年度の制度整備が予定されている「有人地帯における補助者なし目視外飛行」(以下、レベル4)を見据え、複数のドローンを制御し安全に飛行させる運航管理システムを開発し、その有効性を検証しました。その結果、運航管理システムが機能・オペレーションの両面から全国で運用可能であり、複数のドローンが飛び交う上空で衝突回避などの運航管理業務を行えることを確認しました。また、各地域の抱えるさまざまなニーズとドローンの活用方法についても検証しました。
三者は今回得られた成果を基に運航管理システムの社会実装や持続可能なビジネスモデルの確立に向けたガイドラインの作成を2022年1月に向け進める予定です。これにより、業界の発展や課題解決に向けたルール作りを推進し、レベル4環境下でドローンが安全に飛び交う社会の実現を目指します。
※石川県白山市、長崎県対馬市は11月初旬に実証を実施しました。
1.本実証の背景
ドローンは安全確保や利用促進、技術開発などさまざまな視点による課題が官民協働で議論されています。そのような中、政府が設立した「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」は2020年7月に「空の産業革命に向けたロードマップ2020※2」を策定し、2022年度をめどにレベル4を実現する方針を定め、レベル4環境下でドローンを運航するために必要な環境整備と技術開発に取り組みました。特に、警備分野やインフラ点検分野のほか、エネルギーの効率化が求められている物流分野では、レベル4環境下のドローンを活用することで運用負担を減らし、省エネルギー化の実現が期待されます。
こうした背景の下、NEDOは2017年度から「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」を推進しており、2020年12月には先行開発した運航管理機能を実環境で実証する研究開発として、KDDIとパーソルP&Tの提案を採択しました。2021年3月には西日本(兵庫県)、東日本(宮城県)、災害時想定(三重県)の3地域で計9機のドローンの飛行状況を運航管理システムで収集する先行実証を実施しました。今年度はさらに公募で採択した10地域を加えて本事業を進めてきました。
2.本実証について
1)実施概要
本実証ではレベル4を見据えて開発した運航管理システムで複数のドローンを制御し、安全に飛行させる検証を行いました。当日は計13地域で計52機のドローンを飛行させ、KDDIの東京都虎ノ門のオフィス内に設置したドローン運航管理室で運航管理を行いました。その結果、運航管理システムが機能・オペレーションの両面から全国で運用可能であり、複数のドローンが飛び交う上空で衝突回避などの管理業務を行えることを確認しました。加えて、各地域の抱えるさまざまなニーズと、ドローンの活用方法について検証しました。
2)実施日
2021年10月27日(水)
3)実証地域および事業管理機関とユースケース
地域ごとに監視・点検・物流など具体的なユースケースを想定し、ドローンを飛行させました。実証地域および事業管理機関、ユースケースの詳細は下記をご参照ください。
<実証地域および事業管理機関とユースケース>
実証地域 | 事業管理機関 | ユースケース |
---|---|---|
北海道稚内市 | BIRD INITIATIVE株式会社 | ・ 医薬品配送 ・ 海獣監視 ・ 密漁監視 |
宮城県仙台市 | 佐川急便株式会社 綜合警備保障株式会社(ALSOK) 株式会社長大 イームズロボティクス株式会社 | ・ 中山間地域における物資配送 ・ 橋梁点検 ・ 有害鳥獣警備 ・ イベント施設警備 |
福島県南相馬市 | 福島県南相馬市 | ・ 災害時の情報収集 ・ 災害時の音声による避難誘導 ・ 孤立集落等への緊急支援物資搬送 |
石川県白山市※ | 株式会社NTTドコモ | ・ 鳥獣害調査(赤外/可視光カメラにより熊を監視) ・ 物資輸送 ・ 空撮 |
岐阜県美濃加茂市 | 名古屋鉄道株式会社 | ・ 災害初動調査 ・ 救援物資輸送 |
静岡県富士市 | 株式会社イーシーセンター | ・ 物資配送、孤立集落状況・道路状況確認 ・ 橋梁点検 ・ 液状化が予想される地帯の状況確認 |
三重県志摩市 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) 国際航業株式会社 株式会社ウェザーニューズ | ・ 災害時を想定したインフラ点検 ・ 災害時を想定した被害把握 ・ 災害時を想定した物資輸送 |
兵庫県洲本市、姫路市、赤穂郡上郡町 | 日本航空株式会社 セコム株式会社 株式会社旭テクノロジー 株式会社 RedDotDrone Japan 株式会社KADO | ・ 市街地における医薬品配送 ・ 広域施設警備(巡回及び侵入警備) ・ 煙突、工場設備点検 ・ スポーツ空撮 |
高知県高岡郡四万十町 | 株式会社A.L.I.Technologies | ・ 防災、救急用品の輸送 ・ 生活必要物資の定期配送 ・ デジタル化の有効性を検証(山岳) ・ 山間集落の空撮による現状把握(砂防ダム) |
長崎県五島市 | 株式会社そらや | ・ 二次離島への食料品配送 ・ 海難捜索及び離島調査 ・ 海ごみ調査 ・ 農地作付け確認 |
長崎県対馬市※ | 新明和工業株式会社 | ・ 漂着ごみ空撮調査 ・ 漂流ごみ空撮調査 |
大分県杵築市 | 株式会社オーイーシー | ・ 農作物観察、獣害侵入確認、(人命捜索) ・ 地域特産物の配送(災害救助用品の配送) ・ 橋梁点検(ダムの破損調査) ・ 施設内測量(災害調査) ・ 農薬散布 |
宮崎県東臼杵郡美郷町 | 株式会社セレス | ・ 再造林地の苗木、獣害防護柵、土砂崩れ等の点検 ・ 町有林の森林資源調査としての測量 ・ 中山間地域への医療品や食料品配送 ・ 農薬散布 |
(都道府県順、企業名は順不同)
※石川県白山市、長崎県対馬市は11月初旬に実証を実施しました。
4)各社の役割
KDDI | ・プロジェクト全体推進 ・運航管理機能の研究開発 ・各コンソーシアムへの運航管理システム、機体、通信などのアセット、技術支援 ・西日本(兵庫県)のユースケースの先行実証運営 ・災害時(三重県)ユースケースの先行実証運営 |
パーソルP&T | ・地域実証の推進、事務局運営 ・各地域実証の安全管理、ユースケースでの検証実施管理 ・中央管理と各事業管理機関との連携推進 ・ビジネスモデルの確立に向けたガイドラインの研究開発 ・東日本(宮城県)ユースケースの先行実証運営 |
NEDO | ・プロジェクトの全体支援 ・制度設計と連携するための各省庁などとの調整 |
3.今後の予定
三者は官民協議会が取りまとめた「空の産業革命に向けたロードマップ2021」に沿って、ドローンのレベル4の実現に欠かせない運航管理システムの社会実装に向けて解決すべき課題の洗い出しを行います。また、持続可能なビジネスモデルの確立に向けた運航管理要件の具体化や、それらを進めるためのガイドライン作成に取り組みます(2022年1月に作成予定)。作成したガイドラインを活用することで業界の発展や課題解決に向けたルールづくりを推進し、レベル4環境下でドローンが安全に飛び交う社会の実現を目指します。
(注釈)
※1 ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト
事業種別:委託
実施期間:2017年度~2021年度の5年間を予定
ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト
※2 空の産業革命に向けたロードマップ2020
小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会で策定されたロードマップです。
空の産業革命に向けたロードマップ2020
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO ロボット・AI部 担当:森、西村 TEL:044-520-5244
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp